キリリク小説No.1


   


            とりあえず微笑んでみたが、どうなるものでもない。
            リリーは冷や汗をたらしていた。

            ホグワーツ魔法魔術学校、いくつあるのかわからない階段、そのひとつ。
            踊り場のところで、赤色の長い髪をもつ闊達そうな少女は
            対面するメガネの男子生徒と駆け引きの真っ最中だ。

            「で、どうしてくれるって?」
            男子生徒が冷ややかに言う。
            彼のことは、知っている。あまり話したことはないけれど。
            イヤというほど有名。
            ジェームズ・ポッター。
            クセのある黒髪がそのまま中身を投影しているかのような男子。
            成績優秀、スポーツ万能、いたずら好き。
            気取らない性質で、男女どちらの生徒にも人気があった。

            (あっちゃあ〜、よりによって、彼の箒キズつけちゃうなんて)
            寮で小説の続きが読みたいだけだった。
            それだけのために、授業のあとリリーは階段を3段飛ばしで駆け下り、
            運悪く踊り場でジェームズとぶつかり、その拍子に彼の箒をキズつけてしまったのだ。

            (ほら、あれでしょ、ジェームズ・ポッターって、クィディッチの・・・)
            次の試合はいつだっただろうか。
            修復している時間はあるのか?

            なおも引きつった微笑を浮かべるリリーに、ジェームズは冷たい目をやめ、
            こんどはいたずらっぽい目を向ける。
            口元が軽く笑みの形をつくる。
            そんな彼の様子に、リリーは益々冷や汗をたらす。

            「なに言われるんだろう、なにされるんだろう!?」
            そんな不安が脳裏を横切る。
            「なにもしやしないよ」
            唐突に、ジェームズの呆れ声がする。

            「えっ、あらやだ、声に出して言った!?わたし」
            「言った。とてつもなくいわれの無いことを」
            「・・・・・・・・・」
            「・・・・・・・・・」
            「うふふ、ごめんなさい」
            「・・・・週末あいてる?」
            「・・・・・・・は?」
            「ちょっと付き合ってもらえるとありがたい」
            「・・・・・・・・・箒の修理にホグズミードまで?」
            「この話の流れからいって、それしかないだろ?」

            ぼつ、ぼつと、会話が続く。
            心なしか、ジェームズの声が穏やかになっていく気がする。
            (やだわ、ちょっとドキドキしちゃった
             一瞬告白かと思ったわ〜あはは、そんなはず、ないか☆)
            目で虚空を追い、リリーはひとりごちる。

            「リリーだよね」
            「うん」
            「僕はジェームズ」
            「知らない人はいないってくらい有名よ?」

            いつの間にか、裏庭のベンチに腰を落ち着かせ、
            語りモードに入るふたり。

            「クィディッチは好き?」
            「人並みに好きよ。あなたのプレイも見たことあるわ。箒使いが最高。
             限界のそのまた限界までスピード上げて、楽しそうに動いてたわ。
             あなたにつられた生徒は地面に激突していたようだけど」
            「いやぁ、挑発したら面白いようにひっかかった」
            「・・・・・・タチ悪いわね」
            「人生面白く生きなきゃ」

            さらりと聞き捨てならないことを言う彼と話すのは楽しい。
            小説なんて、二の次。
            彼の発言をいちいち信用して良いものだか、ことさら迷うが、それもまた醍醐味で。

            一時間後には、昔からの親友のように打ち解けている二人の姿があった。

            ------------------

            「よお、リリー。これから大広間で早食い競争やるんだけど行かねぇ?」

            数週間後。
            授業の後片付けをしているリリーの背後から、気軽な調子で長身美形の男子生徒が声をかけてきた。

            「あのねぇ、シリウス。
             わたし、一応女の子なのよ、早食いに誘うとはどういう了見よ、紳士じゃないわねぇ」

            半眼で声の主を見やるリリー。
            彼とは数週間前にあっという間に打ち解け、親友になった。
            具体的に言うと、彼ら4人組のリーダー的存在のジェームズと打ち解け、
            その仲間らとも自然、親しくなったという経緯だ。

            「あ、悪い。ついジェームズと同じにしちまうんだよな」
            「・・・あんなに愉快な性格じゃないわよ、わたし」
            苦笑しつつ応える。

            気に障ったわけではない。
            もしかして、わたしってこの4人組から女あつかいされてなくない?と
            胸の中に小さな不安の渦が巻き起こってしまっただけのこと。
            どうしてこんなこと考えちゃってるのかしら?

            いきなり黙考をはじめたリリーに、なにか感づいたのか、
            シリウスはとりあえず彼女の頭の上にその大きな手を乗せた。
            柔らかい艶のある髪の感触が心地よい。

            「シリウス?」
            「んーとさ。本当にごめんな。リリーは女の子なのに」

            シリウスの素直な態度に、リリーはなにかひとつ分かったような気がした。

            「いいわよ?別に女だからって特別扱いされたり、
             置いてきぼりになったりするのって、ごめんだもの
             あなたたちといると、そういう垣根が無くて気が楽よ?」
            「今すねてたくせに」
            「あなたはデリカシーがなさすぎなの〜。
             まあ、そこが良いっていう娘もけっこういるけどね?」
            「あ、いるんだ俺のファン」
            「調子にの・ら・な・い・の!」

            軽い掛け合いをしているうちに、4人組のひとり、リーマスが教室を覗いた。

            「まだここにいたんだー。シリウス、始まっちゃうよ?」
            「お、そうだな、今行く」

            鳶色の髪の、穏やかな笑みを浮かべたリーマスに向かってシリウスの歩が進む。
            と。
            くるりとリリーを向き直ったシリウスがニヤリと笑った。

            「あいつ、もてるぜ?」

            そして、去る。

            シリウスのいた場所を、別世界のように感じながら見つめ佇むリリー。
            まっしろになった頭に、ようやく現実が戻ってきた。
            「あ・・・。」
            喉の奥から、すこしかすれた音ひとつ。
            次の瞬間、彼女は飛びきりの笑顔を浮かべて手を打った。

            「なぁんだ!そっか!うん!」

            明るい声でそう叫ぶと、リリーはシリウスたちを追いかけて大広間へと急いだ。



            大広間では、すでに40を超える生徒が早食い競争に参加登録しているようだ。
            リリーが到着したとき、4人組の最後のひとり、ピーターまでもが選手席に着席していた。
            ジェームズやシリウスと、なにかと衝突するスリザリンのセブルスも参加しているようだ。

            「あらあら、すごい人ねぇ・・・優勝者にはなにが与えられるのかしら」
            少し遠巻きに選手席を眺めやりながら、リリーは4人がよく見える場所を捜してうろつく。

            「きゃーっ、かっこいいわねっ、ブラックさんっv」
            「リーマスくん、線細いのに早食いなんてできるのかしら」
            「ジェームズなにかやってくれそうで素敵〜っ!」

            ふと、他の寮の女生徒の会話が耳に飛び込んできて・・・。

            (ふむ、やはりもてるわね、3人とも。結構なことだわ)

            妙に納得しつつ、なおも場所を捜す。

            「なによ、痛いわね・・・リリーじゃない・・・」
            「あなた最近調子に乗ってない?」

            移動中、ふいに浴びせられたトゲのある言葉に、立ち止まるリリー。
            相手は他寮の女生徒2人か・・・

            「人生調子に乗れるときに乗っとかないと、後悔するでしょ」

            ストレートに彼女らに言い返すと、リリーはさくさくと場所捜しを再会する。


            と。今度はだれかに正面衝突してしまった。
            「マ、マクゴナガル先生」
            「・・・なんの騒ぎです?これは」
            「なんのって、早食い大会ですよ」
            「主催者は?」
            「さあ」

            やっかい事に巻きこまれかねない雰囲気を察知して、味方を探しキョロキョロしてみる。

            「ふぉっふぉっふぉ。わしじゃよ、マクゴナガル先生」
            「まあっ、ダンブルドア先生、あなたの主催ですの!?聞いていませんよ?
             まったくもう、腹痛患者で医務室が埋まること請け合いじゃありませんの、こんな・・・」
            「まあまあ、みんな活き活きとして、楽しそうじゃないかね?」
            「それはそうですけど・・・」

            さて、リリーはこのスキに先生方から離れ、なおも席を・・・

            「おおっとぉ!!!ここで飛び入り参加者だぁ!!!リリーさん、どうぞこちらへ!!」

            「っはあ!?」

            ・・・。
            どうやら、選手席に来てしまったらしい。

            「あ〜いや、わたしは・・・」

            断ろうとするところへ、司会のグリフィンドールの生徒が慌てて耳打ちしてきた。
            「すこしでいいからさ、参加してくれないかなぁ。
             女の子も参加してたほうが、盛り上がるだろ?」

            (う〜〜〜)

            なにやら観客から注目されているし、ここは後には引けない!?
            リリーはとりあえず、選手席に座った。

            ふたつむこうにはジェームズがいる。
            そのむこうには、リーマス、シリウス、ピーター。

            ふう、と一呼吸し、リリーは覚悟を決めた。
            シリウスあたりが、「『女の子よ』とか言ってたのはどーした」とか叫んでいるようだが、
            ここまで来たからにはやるしかない。それこそ、女の意地かもしれない。
            自分でも多少意味不明なものを感じながら、料理が目の前に運ばれるのを待った・・・。

            「さーあ、いよいよ始まります!!!!!
             ホグワーツ校名物第一回早食い競争!!!!
             どんな食べ物が出てくるのでしょう・・・・――――――――――――これですっ!!!!!」

            おおおおおお――――――――――――

            会場中、期待のざわめき。



            そして。



            し――――――――――――ん・・・・・。



            「これはすごいっ!!!百味ビーンズが各選手のテーブルにまず、5Kgずつ運ばれたァ―――――――ッ!」



            ・・・・・・・・・・・・・・・。
            「辞退します」
            「あ、俺も」
            「すんません、菓子食えないんで」

            ・・・・・・。


            ・・・。


            「さっそく辞退者続出ですっ!さあ、41名いた選手はもはや6名っ!!!
             勇気ある選手たち、ジェームズ、シリウス、セブルス、リーマス、ピーター、リリーで――――っす!!」


            なんでこの5人が残ったのか、リリーは冷静に考えていた。
            とりあえず、ジェームズとシリウスとセブルスは意地だろう。
            リーマスは、楽しんでそうだ。
            ピーターは、他の3人がリタイアしないので、逃げ損ねたというところか。
            自分は、そう、自分を試してみたくなったから残った。

            「よーいっ、スタートォ―――――ッ!」

            高らかに響く開始コールとともに、百味ビーンズをいくつも口に入れたところで、リリーの意識は途切れた。



            ------------------


            「くやしいなぁ〜・・・」
            医務室のすぐ外で、リリーがうめく。
            倒れた5人の中で、一番回復が早かったのが彼女だ。
            そのとなりで、ジェームズが愉快そうに笑みを浮かべている。

            「いや、まさか君があそこまでするとは思わなかった」
            「でも、あなたにはかなわなかったもの」
            「僕が1位だったね、102粒で。 君が52粒で2位」
            「早食いって、そういう順位のつけかただったかしら」
            「あれを5Kg完食するやつがいたら、それこそお目にかかりたい」
            「大食い競争よね、あれは。ダンブルドア先生も、何考えてらっしゃるのやら・・・
             ・・・・・シリウスたち、起きてこないわね」
            「セブルスが49粒、リーマスが42粒で、シリウスが22粒、ピーターが18粒・・・
             それぞれ、なに味を引き当てたかは、日ごろの行いの成果ということで・・・」
            「ジェームズったら、どうやったら102粒も食べられるのよ」
            「知りたい?」
            「優勝商品と関係あるの?」
            「・・・自分への挑戦、だよ?」
            「・・・なにか企んでる顔」
            「聞きたい?君にとって、悪い話じゃないと思うけど」
            「内容にあわせたシチュエーションでなら、聞きたいかも」

            まさかね。
            まさか、自分と同じことをジェームズが考えているとは限らない。
            高鳴った胸をこっそり抑えつつ、リリーはひょうひょうとやりあう。



            でも、・・・。



            「表に行こうか。そろそろ星空が見栄えする時間だ」

            ジェームズの優しい笑顔と言葉に、思わず甘えたくなる衝動を抑えて、


            「・・・うん」

            リリーもまた、優しい微笑を返すのだった。



            *******************************************************************************



            4800hitをゲットして下さったかな☆さんのリクエストで、
            「リリーとジェームズの学生時代の小説」でぃす!

            前半と後半で、一週間間空けてしまったので、
            ちょっと苦労した(というか目的を忘れた)思い出のある一品☆

            読めば読むほどツッコミ所満載(文章・内容とも)でアワワな感じですが、お許し下さい・・・。
            いや、むしろ、ツッコミ入れてもらったほうがありがたいかも(笑)

            最終的に、「出会い・ときめき・告白」ってことで!
            (うひ〜〜〜〜〜〜っ、こっ恥ずかししかーっ!)

            でも、こういうのを楽しく書けるあたり、
            ジェームズとリリーの(ノーマル)カップル大好きなんですね、実は。

            か、かな☆さん、こんな感じでいかがでしょう???

  



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