No.2


   


     「ロン、ハリー、私の教科書知らないかしら」

     週末の昼下がり。グリフィンドール寮。
     談話室でチェスをするハリーとロンに、
     ハーマイオニ―はつかつかと寄って来て、開口一番こう言った。

     「知らないよ、なくしたのか?」
     「いつものところに仕舞っておいたから、なくす筈はないんだけど」
     落ち着かないそぶりでロンに答える彼女は、必死に記憶をたどっているようだ。

     「なんの教科書なの?」
     一緒に探してあげるといわんばかりにハリーが立ち上がる。
     「『闇の魔術に対する防衛術』の、よ」
     ハーマイオニ―が答えるや否や。
     ロンが冷たい一言をあびせかける。
     「大広間に昼間持っていってたろ。
     ハーマイオニ―の愛しのロックハート先生の著書!!」

     ロンが声を荒げたのに少しびっくりしたのか、
     ハーマイオニーはロンをしばしじっと見つめて、
     数秒も経たないうちにきびすを返す。
     「あ、ありがとう!」
     『太った婦人』を抜け、ハーマイオニーは談話室から去っていった。

     ロンはハリーを見上げ、やれやれのポーズを取った。
     「今のハーマイオニ―にはイヤミも通じないらしい。
      もう2年生も半ばだっていうのに、まだあいつの正体がわからないのか?」


     ハーマイオニーは大広間に急いでいた。

       そうね、きっと、ロンの言うとおり。
       昼食のあと、忘れて行っちゃったんだわ。
       もう一度あの本を読みたい。
       だって、あれは、わたしのあこがれ。

       2年前まで、マグルとしての生活をしていたわたし。
       ホグワーツ入学案内が来た時、本当に嬉しかったの。

       偉大な魔法使いに、あこがれるわ。
       数々の冒険をこなし、人々を救ってきた、英雄のような魔法使い――――――
       ギルデロイ・ロックハート。
       彼が先生よ?夢のよう。

       彼の本を読むと、将来への夢が広がるわ。
       勇気が湧くわ。
       彼の話を聞くと、あこがれが現実になるような気がするの。
       がんばる力が湧いてくる。


     大広間にたどり着いた。昼食の時間と夕食の時間のちょうど間の昼下がり。
     なかにいるのは数名の学生。

     「あら、ネビル」
     グリフィンドールの席に向かうと、ネビルが机の下にもぐってなにかしているのが見えた。
     「やあ、ハーマイオニ―」
     「こんな時間にこんなところで、何をしているの?」
     「トレバーがいなくなっちゃって」
     「・・・あのカエル。またなの・・・」
     「ところで君は?」
     「ああ、そうよ、教科書を探しているの・・・見なかった?」
     「これのこと?」

     ネビルが見せた教科書は、ハーマイオニーのものだった。
     しかし、昼間最後に見たのとは、ぜんぜん印象の違う教科書。

     「それ、だわ。
      でも、『それ』が、ソースを浴びて烏の猛攻を突破してきたような
      勇敢な姿をしているのはなぜなのかしら。そこかしこ破れてる」
     ハーマイオニーは、無理に理性を保とうとしていた。
     「君のだったんだ。
      さっき、ついうっかりソースをこぼしちゃって、拭き取ろうとしたら
      破けちゃった。ごめんね」
     「・・・・・そ・・・・・・そ、う。・・・」
     「?、ごめんなさい・・」
     
     もはやハーマイオニーの目はネビルも本も見ていない。
     我を保とうと、必死で天井に映し出された空を見上げる。

     「い、いいわ、じゃあね・・・」
     ネビルから本を奪い取ると、すたすたとハーマイオニーは大広間から去った。


     「本、あった?」
     まるで日本とか言う国の幽霊のように、音もなく談話室に入ってきた
     ハーマイオニーに気づいたハリーが尋ねる。
     ハーマイオニー、無言で適当な椅子に着席。
     ローブから、ソースで汚れ、破け、変にねじ曲がってしまった本を机の上に置く。

     「ふさわしいありさまに戻ったな」
     横から無残な姿になった本を覗き込み、ロンが軽口をたたく。
     「ばか言わないで!」
     いきなり叫んだハーマイオニーに、その場の異常を察知したハリーが語りかける。
     「そうだよね、まだ授業も残っているし、僕のを見る?」
     「・・・いいの、なんとか魔法でなおすか、だめだったら買いなおすわ」
     ハーマイオニーが顔を伏せる。
     「もう、なんて日なのかしら・・・お昼まではあんなにいい気分だったのに
      ロックハート先生の本をこんなにしてしまうなんて・・・」

     ハーマイオニーがあまりにも落ちこんでいるので、ハリーはそっとしてあげることにした。


     ハリーがとなりの机に移ったのをぼんやり確認したハーマイオニーは、
     どうしたらこの絶望的な状況を乗り切れるか、いらいらしていた。
     「なによ、あなたには関係ないでしょ?」
     まだ傍に佇んでいたロンに、ついきつい事を言ってしまう。
     言ってしまった直後、ハーマイオニーは言いすぎたことに気づき、
     弁解しようとロンを見上げたとたん――――


     「関係なくないだろ。
      友達が困っているんだ」


     ロンの強い意思の入った言葉を聞き、ハーマイオニーはあっけにとられたが、
     数秒後には少女らしい笑顔を浮かべていた。

     「・・・ありがとう」

     「いいよ、ほら、図書館でこういうのに効果のある魔法を捜そう。
      おい、ハリーも行かないか」


     ロンは知らない。
     何故、ハーマイオニーがギルデロイ・ロックハートに惹かれるのかを。
     だけど、ハーマイオニーが自分の親友であることは、よく知っていた。




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     No1とは打って変わって、現代グリフィンドールの日常編です☆
     改めて思いました、原作読みなおさなきゃ・・・わたし結構知識抜けてる。
     創作に関して言えば、ひとりよがりにならないようにもっと注意しなきゃιι。と。
     
     今回、なんでハーマイオニーがロックハート先生に熱を上げているのか
     疑問に思っていたことを、わたしなりに解釈してみました。
     (個人的にはどうも、ロックハート先生好きでないので。続巻で気に入るかは別として。)
     憧れ、だったのか?ロンのお母さんがロックハートファンなのとは、毛色が違うみたい。
     
     ラストは迷いました。こういうとき、ロンって「ばかばかしい」って飽きれて去るか、
     「友達が困っているのを放って置けない」と考えるか。
     ロンファンを名乗っているのに(いや、最近はシリウス比重に押され気味!?)、
     ロンのこと分かってないよーう、しくしく。

  



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